「障がい」という表記について

「障害」、「障碍」、「障がい」と様々な表記を目にしますが、一体どれが正しいのでしょうか?おそらく「正しい」というものは無いですし、ちょっとした表記の違いが、当事者を取り巻く問題の本質的な解決に繋がるとは到底思えませんが、このホームページでは「障がい」という記述で統一したいと思います。

この表記にした理由なのですが、それはなぜこのように世間で色々な書き方がされているか、ということと大きな関連があります。

調べてみたので少し紙面を割いて説明したいと思います。

もともと「障害」、「障碍」という両方の書き方があったのですが、意味が若干異なります。これは「害」と「碍」の字義を見てみると分かるのですが、以下のようになります。

「害」…1.わざわい。2.いためる、悪くする。3.襲って傷つける。

「碍」…1.さまたげる。2.ささえる。

「害」の字には、見ての通り対象があって意図をもって攻撃する、というようなニュアンスが含まれています。これはあまりよろしくないので、「碍」の字を使いたくなりますが、一方、医学用語としては「障害」という言葉が昔から使われていたようです。この場合は、「いためる、悪くする」の意味でしょう。疾患等により、肉体の機能が損なわれている状態、という意味になります。この意味から身体機能や知的・精神的活動が「障害」されている人、という意味で「障害者」の字が長く使われてきたものと思われます。

医学的用語としての「障害」には、人に危害を加えるというような意味を意図しているわけではないのですが、医学用語という限定を外して字面通りに解釈すると、「わざわい」の意味を含んでいる、ということになります。

また、「碍」の字は、現在のところ常用漢字表に入っていません。常用漢字表はガイドラインであって強制力はありませんので、別に「碍」の字を使用しても良いのですが、新聞や公文書などは常用漢字表に従っています(新聞社などは独自に手直ししているそうですので、完全に同じではないようです)。このため、「障碍」という表記をした場合、公文書などと表記がブレてしまい、これは煩わしく、好ましくない結果になってしまいます。

さて、「障がい」の交ぜ書きですが、どうやら2000年に東京都多摩市で採用されたのをきっかけに、地方自治体で流行しているようですが、「今まで意識していなかった負のイメージを逆に意識してしまう」、「過度な言葉狩りである」、「障害者の実情から目を背けているだけ」、というような批判的な意見もあるそうです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E8%80%85#.E8.A1.A8.E8.A8.98.E3.83.BB.E5.91.BC.E7.A7.B0

筆者個人としてはこうした意見に同意できるのですが、「害」の字は使いたくない、「碍」の字を使うと表記が混乱するおそれが…と、どちらも使用するのが躊躇われます。

となると、非常に消極的な理由になってしまいますが、3択の中でもっとも弊害のない、交ぜ書きを使用する、という結論に帰着するわけです。

強いてこの交ぜ書きに正当性を持たせるならば、「あえてこの中途半端な『障がい』という字を使うことで、問題意識を持ち続けることができる」ということでしょうか…。

こんな瑣末なことで頭を悩ませなくても良いような、真の意味で差別のない、またひいては区別のない社会を実現するということが、本来向かうべき道でしょうし。

やや竜頭蛇尾になってしまいましたが、そういったわけでおおぞらでは「障がい」の表記を取っているのです。